境界性パーソナリティ障害の人への接し方のコツ
境界性パーソナリティ障害の人と同様、時にはそれ以上にその周囲にいる人は悩まされます。「何とかして助けてあげたい」、「実は自分も相当辛い」、「本当に病気なのだろうか」といった思いが交錯し、疲れ果ててしまっていることもしばしばです。まず、周囲の人は当人の苦しさとは別に安定し幸せになってしまうことが大切です。境界性パーソナリティ障害で苦しんでいる人はそれを見習い、やがて取り入れ、安心して健全な精神を取り戻します。その意味で、適切な幸せを満喫することができるモデルになることが必要なのです。穏やかで安心感のある家庭や職場、学校を築くよう努めて下さい。問題探しや、その問題を起こした人を探し出して問い詰めるような犯人探しはやめる必要があります。
その他具体的に、いくつかのポイントを示します
・ 苦しいことは理解している、と共感的理解を示す
・ できる範囲でサポートしたいことも示す
・ できないこともしっかりと伝え、限界設定を設ける
・ 決めたルールや限界設定はころころ変えず、スタンスは一貫したものに保つ
・ どうしたらよいかは、本人に考えさせる
・ 自殺企図などには、「行動制限」で対処する(行動制限の極端なものは、強制入院もその一つですが、簡単なものとしてはしたかった予定を延期する、といったこともあります)
・ 過干渉にならない!!(さびしく感じるかもしれませんが、適切な距離感が必要です)
・ 状態の変化に一喜一憂しないで、長く見守るつもりで
・ 自分自身を大切に、心と体をゆっくりと休める!!
(ジェロルド.J.クライスマン他著『境界性人格障害のすべて』2004年 ヴォイス 参照)
境界性パーソナリティ障害(BPD)の経過
境界性パーソナリティ障害の症状としては、抑うつ、一過性の精神病状態を呈することもあり、症状が定まらず多様化しているのが実状です。一般的には、自分の起こした衝動的な行動などを後悔し、抑うつ症状を示すことがとても多く見られますが、若い女性などでは摂食障害(拒食症または過食症)を併発するケースも多く見られます。治療(カウンセリングその他)は長期化する(2年~5年という報告などあり)ものが多く報告されています。治療機関も一箇所に定まらずに点々とすることもあり、らせん状に一進一退の治療過程を経ると、加齢とともに対人関係も職業面の機能もはるかに改善し、症状が消失していくものもあります。
(J.G.ガンダーソン著 黒田章史訳 『境界性パーソナリティ障害 クリニカル・ガイド』2006年 金剛出版 参照)
境界性パーソナリティ障害(BPD)からの回復
こころの傷は外からみえません。身体の傷であれば、その傷の程度に応じた治療方法が明確に示され、傷が回復していく様が周囲の人にも理解できますが、こころの傷となると、周囲の人々も理解できずに思いもかけずにこころの傷を広げてしまうことさえまれではありません。
境界性パーソナリティ障害の場合、本人もその周囲の人も困難な状況に陥っていることが多々あります。回復への道は平坦ではありませんが、境界性パーソナリティ障害の正しい理解と回復までのプロセスに、こころの専門家の存在は大いに役立つことになるでしょう。
とはいえ、こころの専門家がこころの傷を一瞬で治す魔法の杖を持っているわけではなく、問題に直面している人との地道で粘り強い関わりを基に、つまり相互の信頼関係を基盤に個々の変化の過程に適切に対応していくのです。
こころの時代が叫ばれている今、私たち心理臨床家は如何にして心理援助を行うことが出来るのか、絶えず新しい研究結果に触れながら検討を続けております。
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンターでは、皆様をお手伝いするために、様々なカウンセリング、グループといったメニューをご用意しています。皆様のご利用を心よりお待ち申し上げます。