トラウマとは、自然に治らなくなってしまった“こころの傷”とも言えるでしょうか。
ちょっと心が傷ついたとき、「トラウマかも」という言葉も耳にしたことがあるでしょう。私たちの心は、体と同様に、ちょっとした外傷であれば自然と治ります。転んで擦りむいて血が出ても、しばらくすると治っていくのと同様です。
人には、自己治癒力が備わっているのです。
ちょっとした作業中に、指に針が刺さってしまったとします。自然に抜ければ、痛いですが、しばらくすると治ります。ただ、この針に返し(抜けにくいように釣り針などでよく見かけますね)がついていると、針が抜けずに、いつまでも痛いままです。針を何とかして抜かないと、傷が治りません。心の傷が治らない時にも、同様のことが生じていると言われます。心に刺さったとげが抜けずに、心の自然な回復を妨げてしまっているのです。
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンターでは、トラウマに苦しめられている人たちの支援も、他の様々な人間関係や仕事・家族の悩みと合わせ、更には医療機関と連携した精神疾患への支援と同様に行ってきました。
この度、カウンセリングセンター内にトラウマ・ケア・センターを立ち上げ、少しでもトラウマ、その軽重や苦痛に様々悩まされている方々に、情報提供を行いながら、心のケアの支援を届けたいと考えております。ちょっとした“心の傷”を癒しにいらしてください。
トラウマへの取り組みは、様々なアプローチが開発されています。
そして、100%の治癒率を誇るアプローチは存在しませんが、それは、セラピストとの関係性や、他の要因も影響することによるのでしょう。
本センターでも、基本的には科学的に実証されたアプローチを中心にしながら、相談にいらっしゃる方々のご希望と、提供できる支援について話し合いながら、具体的な支援に進めていきます。
【有名なトラウマ治療のアプローチ】
☆EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法) 苦痛となる人生経験が、脳の中で不適応的にあるいは不完全に処理されたことにより、トラウマとなると仮定します。眼球運動等を通して、少しずつ脳が適応的に情報処理ができるようになるよう促します。自我状態療法など、研究も実践も盛んです。
☆CPT(Cognitive Processing Therapy:認知処理療法)http://cpt-j.jp/cpt.html 認知行動療法のアプローチと類似する部分も多いが、トラウマと関わる認知を特定し、その認知の変容を促すことで、適応的な思考を取り戻すように取り組みます。日本でも研究と実践が進んできました。
☆PE(Prolonged Exposure:長時間曝露療法) トラウマ障害への介入の中では、海外にでは最もエビデンスが積まれているアプローチといえるでしょう。分断され、歪んでしまったトラウマ記憶に徹底的な曝露をかけることで記憶の再構成を促します。本センターでは、PEの本格的訓練と資格従事者による支援は行えない環境にありますので、ご了解ください。
センター主任
淵上規后子 東京メンタルヘルス・チーフカウンセラー(臨床心理士)
20年超にわたる心理臨床活動、こころの支援を提供し続けています。
EMDR学会認定のEMDR治療者リストに登録されています(EMDR学会HP https://www.emdr.jp/参照)
玉井仁 東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター長(臨床心理士・公認心理師)
他,東京メンタルヘルス所属のカウンセラー一覧をご覧ください。