アプローチ
症状を抑えるという点では対症療法的ではありますが薬物療法がある程度効果があることもわかっており、ほとんどすべての患者がなんらかの薬物療法を受けているという報告があります。
アプローチの一例として、2006年に行われた弁証法的行動療法(DBT)のワークショップ中で指摘されているアプローチを紹介します。弁証法的行動療法は、アメリカにおいて唯一境界性パーソナリティ障害に対して有効なものとして研究援助が続けられているものです。
・ 治療(カウンセリング)を台無しにしがちな行動の減少
BPDの人は、感情のジェットコースターに乗っているようだ、と言われるほど情動が不安定であり希死念慮が高まることも多く、安定した治療を続けることを困難にするような行動を取ろうとすることもあります。BPDの人の治療段階にもよりますが、入院といった環境調整から入ることが必要なこともあります。
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンターでは、来談者の必要とニーズに応じて医療機関とも連携し、それらの判断も含めてサポート体制を構築していきます。
・ スキルを高める(認知行動療法など)
情動の調節や、苦痛への耐性、対人関係能力の向上など、社会適応訓練(SST)なども含めたスキルの向上が必要になります。認知行動療法は、現在第三世代に入ったと言われ、マインドフルネスの有効性などが指摘されています。自分の考えと感情を確認していけるようになること、そしてそれらとどのように付き合っていくのかを決めていくことも必要な要素になります。
・ 治療(カウンセリング)を妨げる行動の減少
治療者(カウンセラー等)への巻き込み行動や、家族や他の人を巻き込んで治療を妨げようとする行動は減らしてもらう必要があります。治療(カウンセリング)の中では変化の必要性が確認されることもありますが、どんな好ましいとおもわれる変化さえもそれ自体が脅威と感じられることがあるのです。それをどのように進めるかも、カウンセラーとクライエントの間で合意しながら進めていく必要があります。
以上、ごく簡単にまとめると、自分に対しても他人に対しても丁寧に思いやりと愛情を持って接することができるようになることが必要なのです。カウンセリングはクライエントのためにあるのですが、それを自分で自ら台無しにしようとして、結果として自分を大切にすることができなくなるようなことがないようにするのが、最初の目標でもあります。
また、カウンセリングを進めていくにあたってその他重要な点の一部を以下に示します
枠組み(相談を進めていく上でのルール)
相談の場所、時間、ペース、許されない行動など、カウンセリングを進めていくうえでその枠組み(ルール)を設定、維持していくことは大切なことです。枠組み(ルール)は、時期によって変化するものですし、それ自体の話し合い自体が治療上で必要であるとともに、有益になることもあります。
限界設定(できること、できないことをはっきりさせ、して良いこと、悪いことを明確にすること)
クライエントは自分の限界を感じて来室されることが多いのですが、同じくカウンセラーにも限界はあります。その限界を注意深く見守ること、つまりモニターしながらカウンセリングは慎重に進めていくことが必要です。限界を超える状況が解決されることなく続けば、それ自体が誰にとっても好ましくない結果を引き寄せてしまいます。
(ロレーヌ・ベル著 井沢功一朗他訳 『自傷行為とつらい感情に悩む人の為に』2006年 誠信書房 参照)