各位
日頃より、当センターのご利用、または活動に関心を寄せていただき、ありがとうございます。
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンターでは、相談に訪れる方々の少なくない割合で、トラウマという視点による状態理解、及びアプローチを組み立てることが有益な方々がおられることを認識しております。
当センターの所属カウンセラーには、トラウマという領域について、強く関心を持ち、学びと経験を積み重ねてきているものも少なくありません。
この度、トラウマ・ケア・センターを、改めて立ち上げることとしましたのは、トラウマに悩む多くの方々に対し、支援を届けたいという想いによるものです。
既に、Facebookにてはその後案内をしておりましたが、HP上にては情報の発信をしておりませんでした。改めて、この場にて皆様に共有させていただきます。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター長
トラウマ・ケア・センター主任
つらい体験の中で私たちを苦しめているものは人やモノや出来事なのですが、
苦しめ続けるものはその体験をとおして作られた自分に向けた強い否定的な
イメージです。
EMDRを受けたいと来談されたお一人(女性30歳)は、小さいときに母親に
傍にいてもらうことができず淋しく怖い夜を過ごしていたそうです。
祖父母から何かにつけ酷く叱責されるだけでなく不在の母への非難の暴言も
ぶつけられながら、つらい子ども時代を過ごしたそうです。
「家を出るための結婚」をして子どもを持ったのですが、今少し成長した娘を
可愛いと思えません。
冷静に「うんうん」と話は聞き教えることや注意すべきことはして、形だけは
母親として接していますが、抱き寄せたり抱きしめたりすることができません。
「娘は本当は甘えたいと思っているでしょう、自分が辛かったのと同じ淋しい
思いをさせてしまってる」と自分を責めるのですが、どう接して良いかわからず
一緒にいることすら苦痛でしかたがないのです。
クライエントの方がEMDR(両側性のリズミカルな身体刺激による脱感作と再処理)を
体験しながらご自身の心を見つめていくと、そこに立ち会わせて頂いている私の前で
不思議で感動的なプロセスが繰り広げられます。
そこでは身体が緩み過去の体験があふれ出て、苦しみの中を生きてきた自分への
理解が深まっていきます。
すると、もう自分を責める思いはなくしみじみと自分をいたわる気持ちに包まれます。
その方も、肩の力が抜け今までの自責感が和らぎ
「もう、十分。できる限りのことをやっている」
「娘は可愛そうだけれど、今はしょうがない」という思いに至りました。
そして「だから、娘にも気持ちを話せる人を見つけてあげたい」と結びました。
※この事例は個人が特定されないように弊社であった相談をいくつか組み合わせて作ったものです。
お正月に、2歳になったばかりの男の子に会いました。
彼のバーバと私はとても似ているらしく、「これ(私)誰?」と尋ねると、
嬉しそうに「バーバ!」と言います。
その前に、しかっり人気を得られるプレゼントを贈っています。
おもちゃで遊んでいた彼に、同じように尋ね同じように嬉しそうに「バーバ!」と
答えるのを確かめた直後、、、
彼の前に彼のバーバと並んで「これ(私)だあれ?」と いたずら心で訊いてみました。
彼は並んだ二人を見て困ってちょっと固まってしまった後、黙って顔を背け
おもちゃと遊び始めました。
彼のいたずらバーバが、「さて誰でしょう?」と彼を困らせようとするのを止めました。
こんなに小さな心も、大きな(?)混乱から心を守る工夫や努力をするのだなあと感動しました。
否認や回避という防衛が生まれる瞬間に立ち会ったことになるのでしょうか。
「心を守ることができる」ことはとても大切ですが、たくさんの小さな心が過剰に防衛を
機能 させずに過ごせますようにと願います。
心の誕生は3歳とも言われますが、それ以前の様々な体験の中で心は育まれ心の形が作られて
いくのだなあとつくづく学びました。
そうしなかった自分を責め苦しむクライエントさんの心に触れると、
私の心に「できなかったとしても、あなたは悪くない」という思いが
湧き上がり、それを伝えたくなってしまいます。
喉まできているその思いを横に置いて、
「そうできたら良かった!そうしたかった!ってね」と言葉にしました。
すると、クライエントさんは、
「何でそうできなかったんだろうと『後悔』かな。」
「気づいただけでも、理想の自分に近づいたかな」
「もうちょっとで、あともうちょっとで、、、、。」
「今度同じような状況になったら、きっとそうすると思う」
焦りや不安で固まって身動き取れなかったクライエントさんの中に、
冷静に行動できる自分を信じる自己肯定感がゆっくりと立ち上っていく場面に
立ち会うことができました。
私は、またもや危うく邪魔をしてしまうところでした。