統合失調症に限らないが、薬物療法の重要性はわざわざ指摘するまでもないであろう。
実際に、薬物療法が効果を上げているが故に、心理療法が効果を上げることができたという例もある。
近年、エビデンス・ベースド(効果検証がしっかりとされており、一定の割合で効果があると確認されている)のアプローチが注目されている。そして、インターネットの普及もあり、多くの情報に専門家ではない人たちも自由に触れられるようになってきた。
これらは、社会のニーズの結果でもあり、望ましいことではあるが、情報は過多であり、ある研究と正反対の結果を示しているかのような研究結果も存在したりする。それらを適切に読み解くことは、時に難解である。
治療において、処方されている薬について(もちろん症状等についても同様だが)、病気で苦しむ本人の周りの人たちも共に学ぶことは重要である。専門家は、専門的知識に従って行動する。ただ、本人の周りの家族などは、専門家の言うことをただ盲目的に聞くだけではうまくいかない。本人及び家族などは、苦しみが生活の中でどのように見られるのか、何が体験されているのかを最も知っている人たちである。
治療の専門家と、本人及びその周りの人たちが、チームを組んで治療を促進する、ということは、認知行動療法では以前より言われてきたことであるが、近年更に大切だといわれていることである。
処方薬は、時に大きな効果を発揮する。逆に、副作用に苦しむこともある。処方のされ方も、医師により当然のように癖がある。本人も、家族にも様々な特徴がある。
共にいいチームを組んで、治療の促進を期待したい。カウンセラーも、時にそのチームの直接又は間接的な潤滑油となるべく、お手伝いに加われることもある。
統合失調症、過去には精神分裂病と呼ばれた精神疾患は、過去には人生の終末を連想させるようなものであったとも聞く。実際に、過去の精神病院ではコミュニケーションすら間々ならない人たちをよく目にした。
現在、確かにその症状の軽重は様々であるが、向精神薬の進歩のおかげもあり、他の理由もあるようだが、病態像は随分と軽いものになってきたとの報告もある。
診断も、短期精神病性障害(1ヶ月未満)<統合失調症様障害(6ヶ月未満)<統合失調症(6ヶ月以上)というように、症状の持続期間により変化するようである。これは、統合失調症の診断を正確に行うことの重要性と共に、期間が短いほど予後がよいということ、診断の及ぼす影響などが加味されているとのことである。
統合失調症の症状は、妄想や幻覚など、人によって大きな幅があるが、自分の存在が不確かになるような恐怖とも言える。短期的に、大きな環境の変化や衝撃によりアイデンティティーの統一が瓦解したかのように感じられるときはある。精神科医が統合失調症かどうかを見極めるのを、基本的なこととするのも、その苦しみの大きさから想像しても、納得のいくことである。